2026年4月20日掲載
「従業員のスマートフォンを仕事で使用した場合、通信費はどう扱えばいいのか」
「BYODを導入したいが、費用はどこまで会社が負担すべきか分からない」
仕事で使う携帯電話料金に対して、このような悩みを抱えていませんか?
テレワークの広がりやコスト見直しの一環として、従業員のスマートフォンやPCを仕事に使う「BYOD(Bring Your Own Device)」を検討する企業が増えています。 BYODとは、プライベートで契約している端末を仕事でも活用することです。 わざわざ「導入」を宣言していなくても、「会社支給の携帯がないので個人のスマートフォンで連絡をとっている」という状態は、実質的なBYODにあたります。 実際にソフトバンク(ワイモバイル)の調査(2025年3月)でも、仕事でスマートフォンを使う人のうち55%が「個人名義」の契約を利用しているという結果が出ています。 BYODは端末代を抑えられるメリットがある一方で、導入時に必ず直面するのが「費用負担」のルール作りです。 「通信費は誰が払うのか?」「壊れたときの修理代は?」といった現場の不安に応えることは、スムーズな運用のために欠かせません。
この記事では、BYOD導入の大きなポイントとなる「費用負担」について、法律や税金のルールを踏まえて分かりやすく解説します。会社と従業員の双方が納得できるルールを整えて、安心できる運用を目指しましょう。

BYODを運用する(従業員の携帯電話を仕事に使う)際 、多くの場合「月々いくらくらいを会社が負担すべきか」という具体的な相場が気になるものです。その一方で、社内では「仕事の効率が上がるのだから、多少の持ち出しは本人にお願いしてもいいのでは?」といった議論が起こることもあるかもしれません。
まずは、トラブルを防ぐために知っておきたい法律上の原則と、実務上の考え方を整理しましょう。
労働基準法などの法律において、「業務にかかる費用は必ず会社が全額負担すること」と直接的に決まっているわけではありません。
しかし、労働基準法第89条では「労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項を就業規則に定めなければならない」と定められています。つまり、従業員に少しでも費用を負担してもらう(=会社が全額を負担しない)場合は、必ず就業規則にそのルールを明記し、合意を得る必要があるということです。
もしルールが曖昧なまま自己負担させてしまうと、後々トラブルになる可能性もあるため注意が必要です。
法律上は合意があれば個人負担も可能ですが、実務上は「仕事で使った分は会社が負担する」形にするのが一般的であり、推奨されます。もし「通信費はすべて自己負担」としてしまうと、従業員が仕事の電話をかけるのをためらったり、データ容量を気にして必要な調べものをしなくなったりするなど、生産性に影響が出るかもしれません。
従業員からの「スマホ代はどうなるのか」という不安に応え 、スムーズに業務を進めるためにも、「仕事にかかるコストは会社がサポートする」という姿勢を明確にすることが、ルール作りの第一歩となります。
具体的にどの費用をどこまで会社が持つべきか、代表的な2つの項目について考え方の基準を見ていきましょう。
通信費をめぐっては、会社側が想像する以上に「プライベートの領域に仕事が入り込むことへの抵抗感」や「損得勘定」にまつわるやり取りが発生しやすくなります。
通話料については、仕事でかけた電話代は全額会社負担とするのが基本です。
データ通信料については、最近は定額制プランが多いため、「いくら使っても料金は変わらないのでは?」と会社側が考えがちですが、従業員側には別の不安があります。
速度制限への懸念: 「仕事で大きなファイルを送受信してギガを使い切り、プライベートで動画が見られなくなった場合、会社は責任を取ってくれるのか」という質問は非常によく出ます。
テザリングの利用: 外出先でPCをスマートフォンに繋いで作業(テザリング)を指示した際、「そのパケット代はどう計算するのか」といったやり取りも発生します。
仕事のせいで通信制限がかかってプライベートに支障が出ないよう、何らかの形で補助を行うのが公平です。
端末そのものの購入費は、もともと本人が持っているものを使うため、会社は負担しないのが一般的です。一方で気になるのが「修理代」です。仕事中にうっかり落として壊してしまった場合などに備え、「会社が修理費を一部負担する」「見舞金を出す」といったルールを決めている企業もあります。なお、仕事に必要な有料アプリ(チャットツールやセキュリティソフト)は、全額を会社負担とすることで、従業員も安心して業務に取り組めます。

BYODの費用負担で最も頭を悩ませるのは、「プライベート」と「仕事」の利用が混在していることです。これをどのように切り分けて精算するか、まずは自社で運用できる2つの基本パターンと、より高度な管理を可能にする解決策を見ていきましょう。
| 方法 | メリット | デメリット | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| 一律手当 | 管理の手間が少ない | 金額に過不足が出やすい | 小規模な企業 |
| 実費精算 | 公平で無駄がない | 確認作業の手間が非常に大きい | 厳格な管理が必要な企業 |
毎月「通信手当」として決まった金額(例:3,000円)を給与と一緒に支払う方法です。毎月の計算が不要なため、担当者の負担を抑えられるのが魅力です。ただし、あまり使わない人と頻繁に使う人で不公平感が出る可能性もあります。
通話明細などから仕事で使った分だけを計算して支払う方法です。公平ですが、従業員が明細をチェックして申請し、経理が確認するという作業は、お互いに大きな負担になります。
もし、営業職など通話頻度が高い従業員が多い場合や、精算の手間を完全になくしたい場合は、通信キャリアや外部ベンダーが提供する「公私分計(こうしぶんけい)サービス」という選択肢もあります。これは、専用のアプリを使って電話をかけることで、仕事の通話料だけが会社へ直接請求される仕組みです。
「精算の手間を完全になくしたい」「でも法人携帯を配るほどではない」という場合には、ソフトバンクが提供する公私分計サービス「0063携帯電話使い分けサービス」の活用が有効です。これは、専用のプレフィックス番号(0063)を付与して発信することで、その通話料だけが会社へ直接請求される仕組みです。
特徴: 従業員のプライベートな請求と完全に分かれるため、会社側で精算する手間が一切なくなります。
プライバシーの保護: 従業員は自分のスマートフォンを使いながらも、通話明細を会社に見せる必要がないため、プライバシー面でも安心して利用できます。
導入の目安: 営業職など通話頻度が高い従業員が多い場合や、中堅・大企業、あるいは管理の透明性を極限まで高めたい組織に適した方法です。
会社から渡すお金が「経費(実費)」と認められれば非課税ですが、「給与」とみなされると所得税がかかってしまいます。知らずに課税対象の手当を出してしまうと、後に税務調査が入った際、指摘を受けるリスクが生じるため注意しましょう。
「一律手当」のように、実際の利用額を確認せずに決まった額を渡す場合は、基本的に「給与」として扱われ、課税対象になります。つまり、従業員の手取りが少し減ってしまうことになります。非課税にするためには、仕事で使った分を合理的に計算して支給する必要があります。
国税庁は、仕事と私用で分けにくい通信費などを、非課税の「経費」として認めるための計算方法を提示しています。
具体的には、以下の計算式を用います。
【通信費(基本料・データ通信料など)の業務使用分の計算式】
(1ヵ月の通信料)×(その月の在宅勤務日数/その月の日数)×1/2
たとえば、スマートフォンの月額料金が6,000円、その月の在宅勤務日数が10日、月の日数が30日の場合、
6,000円×(10÷30)×1/2=1,000円
となります。
この「1,000円」までは、非課税の通話料補助として支給して問題ありません。式の最後にある「1/2」は、1日のうち睡眠時間を除いた時間の半分程度を業務に使っているという仮定に基づく係数です。この計算式を根拠に支給額を決めれば、税務上のリスクを回避しながら合理的な補助を行うことができます。

費用負担の仕組みが決まったら、それを就業規則や「BYOD利用規定」などのガイドラインとしてまとめ、従業員に伝えましょう。
「通信費は月◯◯円まで」「修理代は原則自己負担だが、状況により相談」など、具体的な条件を記載します。また、支給する手当が課税なのか非課税なのか、いつ振り込まれるのかといった支払い条件も明記しておくと、従業員からの問い合わせを減らすことができます。
費用負担のルールとセットで必ず決めておきたいのが、セキュリティに関する約束事です。
会社が費用をサポートする代わりに、従業員の皆さんにも「OSを常に最新にする」「会社指定のセキュリティアプリを入れる」といった対策への協力をお願いしましょう。
特に、スマートフォンを紛失した際の報告ルートや、退職時のデータ消去手順を明確にしておくことが、大切な情報を守る鍵となります。
ソフトバンク(ワイモバイル)の調査(2025年3月)では、モバイル端末を仕事に使うことに対しセキュリティ上の懸念を持つ担当者は2割以下にとどまっています。「今のところ問題が起きていないから大丈夫」という意識がうかがえますが、実際にリスクを意識している方からは「端末紛失時の情報漏洩(48%)」や「ウイルス感染(41%)」といった深刻な懸念が挙がっています 。問題が起きてからルールを整備するのではなく、BYODを導入・継続するタイミングで、費用負担とセットでセキュリティルールを整えておくことを強くおすすめします。
個人の裁量に頼るだけでなく、より確実で効率的な運用を目指すなら、本来はMDM(モバイルデバイス管理)ツールの導入が不可欠です。
MDMを活用すれば、万が一の紛失時に会社側から遠隔で端末をロックしたり、業務データのみを消去したりといった高度な対策が可能になります。セキュリティルールを「個人の努力」で終わらせず、システムで一元管理することこそが、企業としての責任を果たす近道といえます。
ただし、私物端末(BYOD)でMDMを利用する際には、法人専用端末とは異なる注意点も存在します。個人所有のスマートフォンは機種やOSのバージョンが多種多様なため、全ての端末でMDMが完璧に動作するとは限りません。一部の機種では想定外の挙動をしたり、メーカーのサポート対象外となったりするリスクもあります。
「管理を強化しようとしたら、従業員のスマートフォンが正常に動かなくなった」といったトラブルを避けるためにも、MDMを導入する際は、事前に社内の主要な機種でしっかりと動作検証を行うなど、慎重な準備をセットで検討しましょう。
BYODの費用負担は、会社と従業員の信頼関係を築く大切なテーマです。曖昧なままにせず、明確なルールを作ることで、コスト削減と柔軟な働き方を両立する大きな一歩になります。
まずは、従業員の皆さんがどのような環境でスマートフォンを使っているか、ヒアリングから始めてみてはいかがでしょうか。
もし「BYODのルール作りが大変そう……」と感じたら、社用携帯(法人契約)への切り替えも一つの手です。ワイモバイルなら、iPhoneからAndroidまで豊富なラインアップを揃えています。Webで簡単に見積もりも取れますので、ぜひチェックしてみてください。
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